2014年7月2日水曜日

【国際/重村 智計】中国と韓国が北朝鮮を崩壊させる戦略に転換~石油の供給を停止 中国は、韓国による統一と米軍撤退を意図

 

 重村 智計

 中国は、韓国による統一と米軍撤退を意図

 日本と北朝鮮は明日、7月1日、外務省局長級の協議を北京で行う。同月3~4日には、中国と韓国がソウルで
首脳会談を開く。これらはいずれも、中朝関係が最悪の状態にあることを示すものだ。

 中国の習近平国家主席は、金正恩第1書記とはまだ一度も会談しないのに、朴槿恵大統領とは頻繁に会っている。
 これはあからさまな、北朝鮮崩壊戦略と言える。追いつめられた北朝鮮は、日朝関係改善に転じた。 1日の日朝交渉は、
中韓首脳会談へのあてつけとして、その直前に北京で行うものだ。「中国がだめでも、日本がある」と、中国にみせつける。
 金第1書記は、中国に捨てられたために、拉致問題を解決する覚悟を決めた。

  ・習国家主席は張成沢粛正を知らなかった

 中国が北朝鮮を見捨てると決めるに至った発端は、米国のジョー・バイデン副大統領の訪中だった。昨年12月4日、
北京の人民大会堂で中国の習国家主席と、バイデン米副大統領が会談した。会談の詳細な内容は明らかにされていないが、
中国の当局者によると同副大統領は北朝鮮の核問題に触れた。

 「北朝鮮崩壊後の処理を、米中で話し合いたい。核問題を解決するために、北朝鮮への原油供給をやめてほしい」

 米政府は、北朝鮮のナンバー2だった張成沢(チャン・ソンテク)・国防委員会副委員長が粛正されたことを知り、
北朝鮮崩壊は遠くないと判断した。バイデン副大統領は、この情報と判断を元に崩壊後の北朝鮮処理に言及したのだった。

 ところが、習国家主席には張成沢粛正の情報が届いていなかった。会談後に、その事実を知らされた習国家主席は、
外交当局に対して激怒したという。

 バイデン副大統領は習国家主席に対して、「核開発を放棄して生き残るか、あるいは核開発を続けて崩壊するか」の
選択を北朝鮮に迫るべきだ、と主張した。このために、原油の供給を中止するよう求めた。

  ・中国が石油の供給を止めた

 今年1月から、中国から北朝鮮への原油供給が中断している。この事態は6月も、なお継続している。石油がなければ、
北朝鮮は崩壊する(参考記事「北朝鮮軍が砲撃に踏み切った真の理由は石油の払底」)。

 中国が、原油供給を止めると北朝鮮は崩壊する、というのが多くの専門家の判断だ。北朝鮮の金正恩体制は、
軍と秘密警察が支えている。石油がなければ、軍は維持できない。北朝鮮は石油を全面的に中国に依存している。

 北朝鮮軍の石油使用量は、アジア各国の軍隊の中で最少だ。年間の使用量は、最大でもわずか40万トン程度。
 日本の自衛隊の石油消費――年間150万トン――と比較して余りにも少ない。

 当面は、備蓄を食いつぶすにしても、2年が限界だ。この危機を打開するには、日本から援助と資金を獲得するしか
術がない。こうして、今年1月末に日朝の秘密接触が始まった。北朝鮮が、日本から経済協力や支援を得るには、
拉致問題を解決する必要がある。北朝鮮の指導者は、「拉致被害者の帰国」を決断した。ただ、その規模が問題だ。

  ・「統一問題は韓国とだけ話し合う」

 北朝鮮の中枢から、「金正恩第1書記が、拉致被害者を帰す方針を決めた」との情報が聞こえてくる。日本の外交当局者も、
この情報を入手した。これは、北朝鮮の情報工作の一環ではあろうが、国際政治は拉致被害者の帰国が実現する方向に
向かっている。

 朝鮮半島を研究する専門家は、「中国は北朝鮮を決して見捨てない」と、説明してきた。また軍事問題の専門家も
「北朝鮮は、中国にとって安全保障上の緩衝地帯だから、崩壊させない」と、説明している。
 ところが、中国は「北朝鮮が崩壊してもかまわない」との外交戦略に、方針を変えた。(>>2以降へ続く)

日経BP 2014年6月30日(月)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140629/267727/?P=1
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140629/267727/?P=2
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140629/267727/?P=3
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20140629/267727/?P=4

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